世界のヒストリカルファゴット奏者③

僕の独断と偏見によるお気に入りのヒストリカルファゴット奏者。ラスト。


⑩ペーター・ウィーラン(Peter Whelan)

自粛期間中にFacebookに投稿したバッハの多重録音が超バズってた人です。
もともとその前から有名な奏者で、スコットランドを中心に活動しています。動画を見た人は知っていると思いますが、その才能はファゴットに限らず!歌、鍵盤、指揮と何でもこなすスーパー音楽家です。現在はアイリッシュバロックオーケストラの芸術監督をしています。
演奏は常にスマートで美しい音色を保ちながらも自由自在。ヴィヴァルディの録音に関しては後述する天才ファゴット奏者セルジオ・アッツォリーニの演奏と聴き間違えることもあるくらい。何が言いたいかというと、天才的という事です。
ラモー、ボワモルティエ、ファッシュ、F.クープランの入ったファゴット作品集と、モーツァルトのデュオのCDはおすすめです。
 
ペーター・ウィーラン クラシカルファゴット
モーツァルト:ファゴットとチェロの為のソナタ K.292 第二楽章 (ファゴットとフォルテピアノへの編曲版)
クリスティアン・ベズイデンホウト フォルテピアノ

 
⑪ジェレミー・パパセルジオ(Jérémie Papasergio)

この人は僕のブログを読んでくださっている人には説明するまでもないでしょう。
ですが、再び書こうと思います。ドゥース・メモワールやル・ポエム・アルモニクといった中世やルネサンス、初期バロックの曲を演奏する団体で主に活動していて、その時代のレパートリーをもっとも得意としています。またル・コンセール・スピリチュエルなどのフランスを代表するバロックオーケストラでも首席をつとめています。
彼の演奏する楽器は数知れず。リコーダー、ショーム、クルムホルン、ドゥルツィアン、セルパン、フラジオレット、それらの楽器の各時代の派生楽器。どの楽器を吹かせても一級品ですが、やはり一番はファゴット。バリバリと乾いていながらも、ふくよかさを併せ持つ音色。フランス語のように流れていく音楽ライン。打楽器のような歯切れの良い低音とカストラートのように美しいテナー音域。一緒に学んでいる今でさえ僕の心をつかんで離しません。
彼のCDでおすすめしたいのは2つ、どちらもシンタグマ・アミ―チという団体で録音したものです。まず1つめは「ファゴットの前にあったもの」というCD。これは大学時代資料室でたまたま見つけたもので、トニョンを聴いて以来のドゥルツィアンの録音。トニョンの丸くて柔らかいドゥルツィアンの音を知っていた僕にはショックでした。しかし、すぐに虜になります。セルマ、ベデッカー、ベルトーリというドゥルツィアンに超絶技巧を求める作品の数々を美しく華麗に演奏していくこの録音はファゴット史に残る名盤だと思います。
もう一つは「テレマンとファゴット」というCD。その名の通りテレマンの室内楽をバロックファゴットで演奏した録音ですが、ここでも流麗な演奏は健在。テレマンのf-mollファゴットソナタってこんなにまで活き活きと演奏できるのか、とびっくりしました。その他ヴァイオリンとファゴットの為のソナタなど、テレマンのファゴットレパートリーを網羅しています。
ジェレミー・パパセルジオ バロックファゴット
テレマン:ヴァイオリン、ファゴットと通奏低音の為のトリオソナタ 変ロ長調より Vivace
ステファニー・ド・ファイー ヴァイオリン
ベルノー・ヴォルテシュ チェロ
ギュイ・ペンソン チェンバロ

⑫セルジオ・アッツォリーニ(Sergio Azzolini)

ラスト。ファゴット吹きにとっては言わずもがな!万人が認める世界最高峰のモダン・ヒストリカルファゴット奏者。あふれ出る天才的な音楽は楽器の垣根を越えて、世界中のファンに愛されています。
どこから説明すればいいか多すぎて分かりませんが。僕は彼を、ファゴットという楽器の持つ可能性を限界突破させた音楽家だと思っています。音楽の持つ楽しさ、嬉しさ、悲しさ、美しさ、、、全てをファゴットという楽器を介してその空間いっぱいにします。一緒に演奏する奏者たちは彼と共に、よりロマンティックに、よりメランコリックに。。自分の持つ音楽を何百パーセントまで広げて演奏することが出来ます。僕が彼とドイツで初めて出会った時もそうでした。彼は僕に「Don`t think !! Feeel !!」という声をかけ、僕の中にある音楽を呼び覚ましてくれました。

・・・と彼の文章だけVIPみたいになってしましましたが、彼の録音についても紹介します。テレマン、ファッシュ、モーツァルト、ドゥヴィエンヌ、、、、どれにしよう、、選べない、、、
といっても、やはり彼がライフワークにしているヴィヴァルディを推したいです。ファゴット吹きの方ならご存じですよね。
彼のヴィヴァルディを初めて聞いたときは衝撃でした。彼自身がTuttiの通奏低音を演奏するこの録音はまるで8ビートのロック音楽のよう。大学時代、色んな楽器の友達にセルジオのヴィヴァルディを聴かせるという啓蒙活動をしていましたが、ヴァイオリニストの友達でさえ(!)、ヴィヴァルディってこんなに活き活きと演奏できるのかと驚いていました。また、緩徐楽章では、歌手でもここまで感情的に歌うことが出来るだろうか、これでもかというほどのespressivoを聴かせます。もし、このブログを読んで、彼を知らない人がいたら。YoutubeでAzzoliniと検索してみてください。
僕にとって彼はファンタジー。想像を超えた音楽をファゴットを通して届けてくれた人なのです。
 
セルジオ・アッツォリーニ バロックファゴット
ヴィヴァルディ:ファゴット協奏曲 RV493 ト長調 第三楽章
ラウラ・ソアーヴェ・クレモナ

まとめ
とりあえず古楽ファンとして僕が憧れるファゴット奏者たち。主に古楽を中心に演奏している奏者、ソリストを紹介しました。どの奏者も個性的ながら、それぞれ素晴らしい。みんなあまりにも魅力的なので、音源を聴くたびに、やっぱ自分はこういう風になりたい、と目うつりしてしまいます。今より若い時はあまりに多くを目指しすぎて迷子になってしまう時期がありました。
しかし彼らは古楽という世界で脇目もふらず自分の目指す道を貫き通している。そういう生き方もあるんだよと教えてくれます。
最近になりようやく自分の作りたい音楽ってこうなのかな。と見えてきたところです。
彼らの演奏はいつも僕に勇気を与えてくれるのです。


オーケストラを聴いていて、名前分からないけどこのファゴット上手い!と思うことは沢山あります。超一流のモダンオケに在籍していながら、古楽器も超一流という人たちもいます。
世界には他にも素晴らしいヒストリカルファゴット奏者が沢山いるはずです。
この人出てきてない!などあれば教えてください。

 
(はぁ、、、3回分いっきに書いた、、、疲れた~)
おわり

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